第四部 昭和前期編 ~多事多端~ 昭和初年~昭和20年

46.昭和の御大典

今上天皇のご即位式は昭和3年11月10日、京都御所の賢所において、盛大に行われることになりました。外国から特派される使節団の宿舎として、「京都ホテル」と「都ホテル」があてられ、両ホテルは8日から19日まで、宮内省が全館を借り上げています。「京都ホテル」は大正の御大礼に続いて2回目のことです。
たまたま、「京都ホテル」は、大ホテルを目指して新館を建築したばかりで、まるで御大典のために新築をしたみたいな形になり、絶妙のグッドタイミングでした。

全館借り上げの期間はわずか10日間ほどですが、受け入れ準備が始まると同時に、一般のお客様は一切お断りして、もっぱら設備の点検、使用する食器や寝具、その他の調度類の新調などに忙殺されます。
何度も大礼使の点検をうけて、やっと合格です。また大使夫人たちのためには、東京銀座から一流の美容師を招いて美容室を特設するなど、細部まで心をくばりました。一行の到着当日は、各部屋に松や桧の盆栽を飾り、卓上には、今を盛りと咲き誇る菊の大輪を生けました。ボーイさんたちも、仕立ておろしの緑色の制服をつけ、大変華やかな雰囲気で、皆さんをお迎えしました。

外国の使節一行100余名は8日夕、特別列車で入洛しました。京都駅には、京都市長はじめ出迎えの人でごったがえし、また駅から宿舎までの沿道も、歓迎の市民でいっぱいでした。
小豆色の自動車が用意され、運転手は襟と袖口が青いダブルボタンのお揃いの制服でした。また各使節には、摂伴役として、外務省の式部官や陸軍・海軍の武官が同乗して案内をしました。
「京都ホテル」にはイギリスほか15ヶ国の使節が宿泊しています。式典が終わって16日には、「京都ホテル」では、お別れの大舞踏会を催して、外国の使節の皆さんの旅情をなぐさめています。

ご即位式

大正15年12月25日、大正天皇の崩御によって摂政宮裕仁親王(今上天皇)が皇位を継承。その即位式である御大典が昭和3年11月10日、京都で挙行された。
天皇の即位式は東京遷都後も皇室典範令によって京都で行われ、京都ではこれを京都発展策の機会としてさまざまな祝賀行事や事業を行っている。
当日、京都の街はお祭りのような賑やかさで、御大典の実況が物産館(丸物百貨店の前身)6階の大阪放送局京都演奏所から全国に放送されたという。

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